ゴールデンパックはスルー安定説
いよいよ兄弟戦争がMTGアリーナでリリースされる。それに伴い、MTGアリーナには新たにゴールデンパックが実装される。
巷ではこのゴールデンパックを買うのが得になるのかを検証・考察しているプレイヤーもいるようだ。
というわけで、私もプレイヤーの端くれとしてこのゴールデンパックは得なのか、スルー安定なのかを考察していこうと思う。
1 前提
まず考察前の前提知識として、ゴールデンパックについての知識を確認しておく。
・兄弟戦争のパックをMTGアリーナのストアで1パック購入するとゴールデンパックのメーターが1進む。
・メーターは10が最大であり、最大に達成するとゴールデンパックを1パック手に入れることができ、メーターはリセットされる。
・ゴールデンパックを開封すると、兄弟戦争のレア・神話レアが合計で6枚手に入る。
・通常のパックと同じくレア被り機能があり、ワイルドカードのメーターも進む。
以上の4点から、10000ゴールドを使用すると、合計で16枚分のレア・神話レアが手に入ることが分かる。
10000ゴールドとは、プレミアドラフト1回分、クイックドラフトであれば2回分である。1~2回ドラフトに参加して十数枚のレア・神話レアを入手することはおおよそ不可能である。
このことから、ドラフトに参加するよりも、パックを向きまくってゴールデンパックを入手する方が資産形成に役立つ・・・・・ように思える。現に、多くのプレイヤーはそのように考えているようだ。
しかし、私は少なくともそうは思わない。その理由を以下で解説する。
2 資産の意義
先の例に挙げた通り、ストアで10000ゴールドを使用すればゴールデンパックと合わせて約16枚のレア・神話レアが手に入る。
一方でドラフトで同じ枚数のレア・神話レアカードをピックすることは不可能である。このように考えると、パック開封の方が資産形成としては圧倒的に得であるように見える。しかし、本当にそうなのかを厳密に考えてみよう。
ここで資産とは何かを考える。資産とは、すなわちカードである。MTGはカードゲームである以上、カードがなければ遊べない。したがって、資産形成とは自分がデッキを組むうえで不自由のないほどにカードを手に入れることを意味する。
これが資産形成の定義である。さて、それでは今一度、パック購入とドラフト、どちらの方が資産形成に有利だろうか。
答えは単純明白である。比較できないから分からない、だ。
もう一度言う。MTGアリーナにおける資産形成とは、自分がデッキを組むうえで不自由がないほどのカードを手に入れることである。この定義に厳密に従うならば、パック開封とドラフトでどちらが得かを断定することはできない。
なぜなら、確かにパック開封の方が入手できるレアの枚数は多い、しかし、それが自分が使わないレアであったら、それは資産に当てはまらないからだ。
多くのプレイヤーはレア・神話レアを同列であるかのように考察している。中には、パックには必ずレアが1枚入っているから、MTGアリーナにおけるレアの価値は200ジェム(1パック分)であるという暴論をいうプレイヤーもいる。
では彼らに問いたい。かつてのスタンダードに収録されていた、《ダンジョンの入り口》には200ジェムの価値はあるだろうか。《静かな潜水艇》は200ジェムを払ってまで手に入れたいカードだろうか。スタンダードやエクスプローラーのみを楽しみたいプレイヤーにとって、アルケミーのレアカード1枚と200ジェムは同じ価値だろうか。
正常な判断ができるプレイヤーならば、答えは決まっている。絶対にNOだ。
MTGアリーナというゲームは、不要なカードを砕いて通貨に変換するという機能がない。したがって、自分が使わないカードの価値は文字通り0である。
そのため、いくらパックからレアカードが出ても、それが使えないカスレアあるいは自分が使わない予定のカードであれば意味がない。だから、入手できるレアの枚数のみを比較して、どちらが得かを考えること自体がナンセンスなのである。
3 資産形成を再定義しよう
さて、ここまで話したように、レアの入手枚数のみではどちらが得かを判定できない。では、どのようにすれば比較ができるのか。
ここで、資産形成の意義から考えることにする。資産とは、自分がデッキを組むために必要なカードである。それ以外のカードはあってもなくても変わらないので、資産に該当しない。ここで、確実に資産として数えることができるものがある。ワイルドカードである。
つまり、MTGアリーナでの資産形成=ワイルドカード集めということになるのだ。よって、資産形成の効率の良し悪しは、いかに少ない費用でワイルドカードを増やせるかと置き換えることができる。
4 再考
では、改めて資産形成の効率でどちらが上かを考えてみる。
ここでは例として、20000ジェムをすべてパック購入に費やした場合とドラフトに費やした場合を比較する。
■パック購入の場合
1パックが200ジェムのため、100パック開封することができる。この場合、手に入れることができるワイルドカードはレア8枚、神話レア4枚である。
※よく6パック開封でレアワイルドカードが手に入るため、100÷6=16.6666…枚と計算してしまいだが、これは間違いである。ワイルドカードのメーターは神話レアと共通のため、例えば24パック開封した場合は13~18パックの6パックを開封しても神話レアのメーターが進むだけであり、3枚目のレアのワイルドカードは手に入らないからだ。
■ドラフトの場合
プレミアドラフトの場合を例に考えると、参加費が1500ジェムのため、6回参加できる・・・ように思えるが、実際は報酬としてジェムが何割か返ってくるため、実際はそれよりも多くの回数参加することができる。7勝すれば参加費の約1.5倍のジェムが手に入るので、実際には十数回ドラフトに参加できるだろう。高い勝率を安定して出すことができるならば、無限ドラフトも可能である。
このように考えると、パック開封はプレイヤーの力量を問わず、投下したジェムに対するリターンは一定である。これに対して、ドラフトは高い勝率を安定して出せるならば、入手できるワイルドカードは事実上、上限がなく無限である。
5 再考 その2
最後に、私がゴールデンパックをスルー安定であるとする最大の理由を挙げる。
それは、パックを購入するという行為は資産の換価効率が非常に悪いからである。
例えば、100万円を自由に使ってよいとした場合、その100万円は豪華な料理を食べることに使っても良いし、大好きな車を購入するのに使っても良い。あるいは、思い出作りのために遠い場所に旅行するのも良いだろう。
しかし、資産の換価効率という観点から見た場合には、100万円を旅行に使うことは、100万円で車を買うことよりも効率が悪い。なぜならば、旅行に使ってしまった100万円は、2度とお金に変換できないからだ。つまり、旅行に使うための100万円は、文字通り100万円の価値しかないのだ。
これに対して、100万円を車に使った場合はどうか。その車が古くなったら、中古車として売却することで100万円の何割かは返ってくる。そのお金を使って、今度は鞄や靴あるいは服を買う。それが古くなったら、また売却して、投下したお金の何割かを回収する。さらに今度はそのお金で欲しかった本を買い、それを読み終えればまた売ってお金に変換する。物を買う行為は、お金を物に変換し、さらにそれをお金に変換するというサイクルを作ることができる。
勿論、このサイクルはいつかは消えてしまう。しかし、100万円というお金を実際には100万円以上の価値で使うことができるのだ。
話をMTGアリーナに戻す。ゴールドでパックを購入する行為は、まさに、100万円を旅行のために使う行為と等しい。ゴールドをカードという、それ以上には変換できない物に変える行為だからだ。だから、10000ゴールドでパックを買う行為は10000ゴールドの価値しかない。
ではドラフトはどうか。ゴールドで参加してカードを手に入れるだけではない。ジェムが手に入る。ジェムは、パックを購入することにも使えるし、各種イベントに参加することにも使える。100万円で車を買う行為と同じだ。100万円以上の価値がある使い方だ。それはつまり、10000ゴールドが10000ゴールド以上の価値を持つということになる。
以上の理由から、私はパックを購入していない。おそらく兄弟戦争がリリースされてもこれは変わらないだろう。
そもそもエクスプローラー・アンソロジーも買わないといけないし、無駄遣いをしている余裕はないのだ。